翌日、私は休暇を取った。
「今日は○○会館でメーカーとの打ち合わせだ」
「うちの事務所の隣りじゃないの?」
「ああ…昼までには終わる」
もちろんこれは嘘だ。「私も出社だから…」「休みじゃないのか?」
「ゆうべ言ったでしょ?」
いつもの通り、聞いてないふりをした。妻の方も、臨時なので、早く終わるはずだ、と言う話だった。
所長には、事務所の一角にスペースを用意してもらっていた。
「ああ、これはご主人、おはようございます今日は何ごとで?」
スーツ姿の私を見て驚く小芝居…
「そこで社用がありまして…」
「そうですか…じゃあ早く終わったら奥さんを迎えに?」
「ええ…時間が合えば…」
私は妻に、終わったらそこで待つから、携帯に連絡するようにと言った。
事務所の外の掃除を指示されて、妻が始めたスキに、私は事務所に忍び込んだ。
「伊藤さん、オフなのにすまなかったね。」「いいえ…それより…そのアザ、どうなさったんですか?」
「これは…」
私はほくそ笑んだ。
『もう一つのお願い?なんです?』
私は所長をしたたか殴り付けてやった。
気分は晴れなかったが当然の感情だった。