浴場前に着く。入り口で男湯女湯に分かれている。当然のように男湯の方に向かうその時、Kは言った。
「ここに貸切の札あるね」と。
確かに床に転がっていた。そのあたりの仔細は知らないが、旅館の方に言えば手配してくれるのだろうか。
「これ下げたら、誰も入ってこないかなぁ」
「まぁ、そうなんじゃないか?」
「じゃあ、下げてみよっかな〜」
ちら、とKが僕の顔を見る。
「ね、一緒に入らない?」
…? Kは何を言っているのだろう? …理解するまでに1分はかかったと思う。
理解した時には、2人して顔を真っ赤にしたまま固まっていた。