静夜にとって私はやっぱり玩具でしかなかった…
「ルナ…様?」
ルナがハッと我に返る。
「あっ…ι何でも無いの…ごめんなさい」
「──……ルナ様」
十希が、ルナの頬に触れた。
「あっ…」
ルナの目から涙が溢れていた。流れる涙は止まらず、ルナが動揺する。
「ごめ…違うの…何でも無い」
目をこすり、必死に涙を止めようとする。
でも哀しみでいっぱいのルナの心が涙を流し続けた。
「何があったんですか?」
「ッ…」
ルナが、十希の問い掛けに感情が崩れた。
「──……私…静夜義兄様を…愛してるの。でも…違う…私は玩具じゃない」
「ルナ様…」
「静夜にこれ以上抱かれたら私は……狂ってしまう」
ルナが涙を流し、膝をガクッと曲げ床に崩れ落ちる。
「ルナ様」
「十希……私はやっぱり汚い。静夜を〈兄〉として〈愛してる〉なのに…静夜に抱かれて……私は…」
「……静夜を家族のように愛して?」
「──……静夜を異性として愛せない。私にとって男は怖い存在でしかない。でも静夜は違った。私を妹にって……だから愛せた。安心出来たから…」
「男は全て怖いのですか?」
「怖い。男はみんな…」
「……」
「静夜義兄様は〈兄〉になると言ったのに…結局は〈男〉だった。私は…静夜義兄様に抱かれ…もう静夜義兄様の妹にはなれない。玩具として…静夜のモノになった」
「……」
ルナがフラッと立ち上がると机の上にあったナイフを手に取った。
「ルナ様何を…」
ルナはナイフを手に取ると自身の手に刃先を当て、スッと切った。
ボタッ
ルナの手から大量の血が流れ、床に溢れ落ちた。
血は楕円をつくり、鮮烈な血だまりが床に広がる。
「Σルナ様!」
瞬時の出来事に十希はルナを止める事が出来なかった。
「見て……私の血は誰の血が流れてるか分からない。汚い血…」
ルナが、手から流れる自身の血を嫌悪な気持ちで見下ろし、憎々そうに言葉を発する。
十希は慌ててルナの切傷を止血する。
「なんて…馬鹿な事を!!」
「いらないの…汚い血も汚い躰も……汚い私も……いらない…いらない!!」
ルナが涙を流し、十希の止血を振りほどく。
「私は…もう誰も信じられない」
「ルナ様…」
ルナの心は病んでしまった…