オレとサキのメールは、何の気兼ねもなく、思いゆくまま続いた。子供のこと、かみさんや旦那のこと、姑のこと、他愛もないけど楽しい…
オレは会社の行き帰りだけでなく、家ではトイレの中、果ては残業を装ってまでメールに時間を費やすようになった…
『何か…お兄ちゃん無理してないかなぁ…』『無理って?』
『今どこ?もう家?』『会社だよ。残業』
『私に付き合ってくたびれてない?』
『全然…』
『ユミさんに内緒なんでしょ?』
『…うん』
『なんか…変だね…私達…』
『変…か?』
『すごく不思議…悪いことしてるみたい』
『…不倫?』
『アハハ…そんな感じ』
『…確かにね…オレ、お前とメールして、ドキドキするもん』
サキは、しばらくしてからハートマークをたくさん送って来た…
考えて見ると、メールって、ほんとバーチャル…この中ではどんな醜い者でも姫や王子になれる。大阪弁のおばちゃんでも鹿児島弁のモサでも、メールなら大恋愛ができるんだ…オレとサキはお互いを知っているから兄妹だから、余計に不思議だった…