「…で、どうするんですか…?」
ハッ…
急に現実に戻され、光は戸惑ってしまった。
「あっ…あぁ…。…ちょっと考えてみるわ。お父様の意向には逆らえないとは思うんだけどね。じゃあ私帰るわね」
ソファからすくっと立ち上がり、部屋を後にしようとした光の手を引っ張り、祥太は引き止めた。
「祥太…?」
「私は…ずっとあなたにお仕えします。何かあったら言って下さい。命をかけてもあなたを守りますから…」
祥太は本気だ…
光は手を振り切り笑顔で言った。
「心配しないで!私けっこう強いんだからっ!祥太に迷惑なんかかけないわ。」
ガチャッ バタン…
「…光…」
お父様…私はまだ16なのに、もう結婚相手を見つけなければいけないの?私に自由の時間は無いと言うの?
昔、お母様はこう言ってた。
『光、お金は、大切だと思う…?』
「んん〜っ…よくわかんないよ。」
結子(母)は優しく笑った。
『そうね…私も分からないわ。でも…いくら大切だとしても…この世で一番大切かしら?』
「…この世…?お母様、何かあったの?」
母の顔を見上げると、泣きそうな顔で、ある言葉を吐いた。
『あの人は…なんで…なんで私よりもお金を愛しているの…!?』
次の日、母は死んだ。世間的には、病死になっているが、自殺だ。
『病死』という事にしたのも父だ。
父は昔から冷酷で、金のためならなんでもしてきた。そう、母が死ぬ二日前、父は母を、取引先に売ったのだ。