男は女が立てないことに気付いていた。しかし慣れてくれば立ち上がって抵抗してくるだろう。女が恐怖で怯えているうちに三脚とビデオカメラを準備しなくては…。男はクルリと女に背を向けて、あらかじめ地下室に用意しておいた三脚とビデオカメラを取り出し始めた。………男が何をしたいのかはよく分からないが、とりあえず冷静にならなくては。女は役立たずのクソ足は無視して男の方に顔を向けた。男は何か取り出しているみたいだ。何をされるんだろう。不安と恐怖でふぅーと息を吐きだすと女は男を観察しだした。多分だけど年齢は20代後半から30代前半。顔はどうだろう。一般的にハンサムの部類に入りそうだけど、私には怪物に見える。背は高い、190あるかないかくらい。ガッシリとした筋肉質の体型は、ここへ連れ込まれる時に気付いていた。男には"黒"のイメージが強い。黒い髪に黒のTシャツ。黒のジーンズに黒のブーツ。黒のTシャツから見え隠れしているのは腕に刻まれた刺青。残念ながら男に見覚えはなかった。さらに追い討ちをかけるように目の前には三脚が用意されその上にビデオカメラが設置された。冷静を保とうとしてもビデオカメラに目が吸い付いてパニックになりそうだ。『な…何をするの』女は呟いた。男はビデオカメラをいじりながら静かに、そして笑うように言った。『楽しいことだよ。そんなに怖がらなくても乱暴はしないよ。』そしてビデオカメラから手を引くとまた話だした。『俺も依頼されてやってるからね、女に手をあげるのは好きじゃない。でも言うこと聞いてもらわないとアンタに手を出さざるを得ない。』男はそう言うと女に近づいた。『殴られたくないならまずは裸になってもらわないとね。』