その後、サキのメールの数はめっきり減った。
『あの日のこと、怒ってるのか?』
『そうじゃないよ…子供が夏休みに入って大変なのよ』
義母と騒がしい子供の取り持ちに苦労している、とのことだった。『明日、子供連れてアキラさんの所へ行って来る…』
『そうか…夏休みだもんな、子供達喜んでるだろう』
『うん、すごいはしゃいでる(笑)』
『…長くいるの?』
『一週間…』
『そうか…楽しんでおいで』
『ありがとう』
『帰って来たら、また連絡くれる?』
『そうします』
『本当に?』
『(笑)』
オレに家庭があるように、妹にも…しばらくメル友とお別れだ…
アイツは子供に微笑み、単身で仕事に疲れた夫をいたわる…子供を優しく寝かしつけたら…アキラさんの腕の中へ…
ああ! 想像すまい!
「サキさん、アキラさんの所に行ったんだってね」
ユミはまた携帯の明細を見ている。
「ああ、そうらしいな、夏休みだもんな」
「久しぶりでアキラさんも嬉しいでしょうね」
「そうだな」
「あの歳で単身はきついからね」
単身の中年男…遠く離れた家族を思って、切ない毎日に違いない。晩になると、味気無い夕食…そして寝床はもちろん一人…