いつもの私なら「あんまり焦ってないし」とか適当に流すのに、なんだか気弱になってしまっている。
「…ん〜。今の彼とは結婚できるかどうか、わかんないですね」
「どうして？」小林がくいついてくる。
「だって、ちゃんと就職してないから」
「んじゃあさ。既成事実つくっちゃえばいいんだよ。そしたら絶対ちゃんとするって」
無神経なことを平気で言う。けれど、この男のそういう所は嫌いではなかった。
「それもなんか嫌ですよ」
左折のウィンカーを出して、左側を目視しながら小林の横顔をちらりと見る。
電車や居酒屋で横に座っている時は、べったりもたれかかってくるくせに、車の中ではさすがに警戒しているのか、その右手は行儀良く膝の上に置かれている。
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