私と小林は同じ年に異動してきた。私が新卒で、彼は転勤だった。
私のほうが下なのに、彼はぴしりとしたスーツ姿で、ふざけたところの微塵もない態度で「小林と申します。よろしくお願い致します」と慇懃に頭を下げたのだ。
すごく年上の、真面目な怖い人に見えた。
そこから彼の本性を知るのに、たっぷり二年はかかった。
飲み会の時、妙にべったりくっついて甘えてくる小林が意外で、同僚の女性に
「小林さんて、結構遊んでる人なんじゃないの?」ときくと、
「なんで?」ときかれたので、
「なんか昨日ずっとくっつかれてたから」
と言ったら、
「それ、単に酔っ払って、わけわかんなくなってるだけだよ」と笑われた。