男は早口にしゃべった。たまに言いにくそうに声を小さくするので聞き取れないこともあったが話し終わる頃には私は口をポカンと開けていた。 『依頼人というのは、男で俺の知り合いなんだ。彼はいつも君のことを見ていた』 (私のことを見ていた?ストーカーかよ。) 驚きはしなかった。女は過去にストーカー5回、しつこい誘いも数えきれないほどだった。その結果、女は今まで好きな人が出来ても付き合うことを避けてきた。世の中の男性は私の容姿ばかりで心を好きになってはくれないと思い込んでいたからだ。 『で?その、イカれたストーカーは誰なのよ』 『彼は実は……ヒキコモリなんだ。だけど俺だけは、ちゃんと部屋に入れてくれる』 『そして、私を見るときだけは外へ出てくるのよね?』 『いや、いつも彼は部屋の窓から君を見ていたらしい。朝の六時半、夜の八時。君は仕事に行くときと帰るときだけ見られてたのさ』 『気付かなかったわ。家の前を通ることはよくあるし。』 しかし、男がアンタからキミに呼び方を変えていたことは気付いていた。 『依頼というのは簡単で、君もご存じの通りこのビデオカメラで撮影するってことだ』 『何を撮影するの?』 そう呟くと男は女に近寄ってきた。そして甘い声で囁く。 『君の淫らな姿だよ。彼は君の体の全てを見て興奮したいんだ』 女はゴクリと唾を飲んだ。男の官能的な唇が優雅に動く。目が離せない。 男が身を屈める。そして優しく触れてきた……。