優しく触れてるか触れてないかの感覚で女の口の周り、耳の後ろ、瞼の上を男の唇が、かすめていく。 女は緊張と僅かな興奮でうめいた。 そのうめきを聞いて男はピタッと動きを止めた。そして何も言わずにビデオカメラに近寄り、角度を調整しながら言った。 『彼は俺だけに心を開いてくれている。彼にとって俺は唯一の友達らしい。ほっとくなくて、こんな依頼まで受けてしまった』独り言のように呟きながら苦笑している。 女はそれを聞きながらも胸がドキドキして破裂しそうだった。危険だと分かっていたのに男のかすめるような愛撫に反応してしまったのだ。しかも体はやめて欲しくなかったらしく下半身がムズムズしている。 『アナタみたいな人がヒキコモリと友達なんて信じられないわ』 男は女の言葉を無視して言った。『準備完了。さぁ録画するから脱いでくれ。』 女は目を背ける。女は好きな人の前でも裸になったことはなかった。つまり処女だ。一旦は決意して白いブラウスに手を伸ばしたけれどもやっぱり出来ない。 『無理よ…。そんな恥ずかしいこと。しかも私のストーカーに見せるんでしょう?』 『一人で出来ないなら二人でやればいいさ』 男は録画のボタンを押すと女に近寄り仰向けに押し倒した。 『ちょっと!やだ!』反抗しようとした手を掴まれて、叫ぼうとした口を、男の唇でふさがれた。 男の人からこんな風に触れられたことは今までになかった。初めての感覚に思わず腰を浮かせる。ダメだと分かっても、理性を本能が上回った。女は男にリードされてキスを続け、自ら口を開いた。男はすぐに舌をさしこみ、からませるように舐め回した。ピチャピチャ…クチュクチュ…。ヨダレが絡まり音を出す。ようやく長いキスが終わると女は言った。『手慣れてるのね、今まで何人と付き合ったの?』 『数えきれないね』 熟練された手つきで女の服を脱がしていく。 女はもう抵抗しなかった。そして、これから起こるであろう甘美な行為に身を震わせた。一方、地下室に続く階段に残された女の白いバックのなかで、携帯の着信が虚しく暗がりに響いていた。