私と小林は、ビールをひと缶ずつ持って、ホテルの外に出た。
月夜だった。
小林が、私の手をつなぐ。いろいろしゃべりながら、夜道を歩く。石段を上がって、小高い丘の上の小さな公園に着く。
私たちは、ブランコに乗った。子どもみたいにはしゃいで、ビールを飲んだ。
そうして、小林が、
「あ、下駄飛んじゃった。取ってきて」
と言うので、
「嫌ですよぉ。自分で行って下さい」
と答えると、
「だって両方だもん」
というので、仕方ないなぁと私は立ち上がり、下駄を取ってきて、小林に履かせてあげた。
すると、ブランコに座ったままの小林が、私の両手を握った。
「え?何?どうしたらいいの?」
私が言うやいなや、彼は私を引っ張り、自分の膝の上に私を横向きに座らせる。
私を抱き寄せながら、優しくブランコを揺らし、勝ち誇ったように言う小林。
「彼氏に、こんな風にしてもらったこと、ある?」
優しく私の髪を撫でる小林。私はうつむく。くらくらする。
「…ない、かも」