男が立っていた。スーツ姿の酷く顔色の悪い男。薬でもやっているのか狂気じみた微笑みを浮かべ足を玄関内へ入れてきた。
莉香は血の気が引いていくのがわかった。ありったけの力を込めて扉を閉めようとする。しかし、男はドンドン部屋の中へ入ってくる。膝がガクガクした。
男は半分体が入ると莉香の肩を爪が食い込む程掴んだ。
あまりの痛さに莉香が一瞬怯んだその隙に、男は部屋の中へ完全に入ってしまった。
男は無言で微笑んでいる。
莉香は恐怖でよろめきながらも、ワンルームの狭い玄関口へと逃げようとした。
ガッ!
その瞬間鳩尾を蹴られ、後ろへ倒れ込んだ