「マホ、コンタクトにすればいいのに」
ミクは私の眼鏡を取ってまじまじと見た。
「案外イケてるよ。」「私は眼鏡が好きなの」「取ったら可愛いのに」
本当はそう思ったこともある。母さんも眼鏡をかけてた。お父ちゃんはやっぱり眼鏡に愛着があるみたい。
『マホ、母さんに似て来たな…そうだ、この眼鏡かけてみて…ああ似てる…』
いつかそんなこと言って懐かしそうに笑った事がある。あの笑顔がなんだかこべりついちゃって…
「また[お父ちゃん]に会いに行こうかな」
ミクは私をからかうように言った。
「今日は仕事に行ってるからいないよ」
「残念!」
「何がいいの?ただのオヤジじゃん」
「なんか遠い目をした所かな」
「それは風邪でボーッとしてたからだよ」
私は大笑いした。
そうかもね、と二人は笑いながら別れた。
家に帰って夕飯の仕度…今日はお父ちゃんの好きな親子丼だ。
「ただいま」
「お帰り!早かったね」
「ああ。今日はこの近くから直帰だ…親子丼か。嬉しいな」
ホッとした笑顔…
「お風呂沸いてるよ」お父ちゃんの下着を用意して、配膳に忙しい。
遠くで雷が鳴っている。