冷静になってみると、もしかしたら智也は嘘をついたのではと思えてきた。
俺と桃子さんの関係(というか、あの事)に気付き、暗に止めろと
言ってきたのではないかと…。
しかし、それはその翌日そうで無い事が分かってしまった。
俺は見た。クラスメイトも結構騒いでいた。
智也は、首にキスマークをつけて学校へ来ていた。
ワイシャツの襟を立てたりしていたが、どうしても見え隠れしてしまう…。
桃子さんのキスマーク――俺は智也にやり場のない怒りを感じた。
その日、俺は体調が悪いと言って学校を早退した。
そのまま、電話も入れずに俺は桃子さんの家へ向かった。
「どうしたの?」桃子さんはノーメイクでも十分肌が美しかった。
勢いでここまで来てしまった俺は、急に恥ずかしくなって
何も言えなくなり、俯いてしまう。
「私が欲しいの?」
「…はい」
桃子さんは肩をすくめて笑った。
桃子さんは愛車に俺を乗せてくれた。
海岸沿いを走り、温泉街に入り、小さな旅館で車を止めた。
30分足らずで、こんな趣のある所に来れるなんて…
桃子さんは、やっぱりオトナなんだなと感じた。