「みんな綺麗になったなぁ」
僕ら男共は口をそろえて彼女たちに言う。
男としては28歳なんてまだまだだけど、やはり女性は違ってた。
すでに結婚して家庭を持っているのがほとんどだ。
よく同窓会で会うと、実はあなたが好きだったとか何とか言って、そのまま夜を一緒に、なんていうドラマはよく見るが現実はそう甘くはないみたいで、彼女たちの口からは懐かしい昔の話と、旦那や子供との楽しげな話が飛び出してくる。
そこにそんな展開に発展しそうな会話はない。
いや、誤解はしないでくれよ ?
僕はそれが目的でこの同窓会に参加したわけじゃないぞ。
一応僕にだって、今付き合っている彼女がちゃんといるんだ。
ただ、冴えない彼女たちを見てきたせいか、すごく綺麗になった彼女たちを見て、なんていうか男の性 ? みたいなのがこうムラムラと…。
しかし、そうなるとその話に参加している彼女、遠野麻里もあれだけ綺麗になったんだ、きっと結婚していい家庭を作ってることだろう。
僕のそんな視線が強すぎたのか、彼女が不意に僕を見てそして笑顔で近づいてきた。
「お久しぶり、井坂君。覚えてる ?」
「えっ、あ、ああ、もちろんだよ、遠野さん、あ、今はもう遠野じゃないかな ?」
苦笑いした僕に彼女も苦笑。
「遠野のままよ。私まだ独身よ ?」
「ええっ、嘘 !?」
こんなに綺麗なのに男たちが放っておかないはずだ。
だけど彼女はキョトンとした顔で僕を見る。
うっ…な、なんだ、今度は可愛い…
「嘘ってどうして ?」
「だ、だってさ、遠野さん、そんなに綺麗になったのに。言い寄る相手が沢山いたろ ?」
僕の返事に彼女はくすくすと笑う。
「お世辞が上手いわね。確かに何人かとお付き合いもしたけれど、実は忘れられない人がいてね、その人にあって確かめてからと思ったの」
「え ?」
彼女はそう言って僕を見つめた。