八月だけれど、流石に夜中の三時半にもなると外はひんやりと寒いくらいだ。ましてや私は…下着姿だし。ドアの外に一歩踏み出すくらいでこんなに不安な気持ちになる私は、所詮女子校を卒業して一年半も経っていない、頼りない女の子なのだと気付かされる。
可愛いと一目惚れして買った白のサンダルを履いて、よたっ、と外へ出た。カチャ、と静かにドアを閉め、明々と電気の付いたドアの外に立ち尽くす。あぁ、何やってんだろ。普通に恥ずかしいな…。
私はアパートの三階に住んでいて、周りにゴチャゴチャとしたものも大してないので、今も結構な見晴らしになってしまっている。ただ磨りガラスがあるので、胸から下はモザイクがかかったようになっているが。アパートの真向かいは一軒家で、きっと今頃普通の家族が眠りに就いているのだろう。もう、頼むから普通のおばちゃんとか起きてこないで下さいねって気持ちだ。もし若い男の人だったら…。
「ぅぅ〜…。見て欲しいけど、見られたらどうすれば…。」
冷静なんだか考えなしなんだかって感じの頭を使うのをやめて、とりあえず持ってきた鏡を床に置いた。1メートルくらい離れて腰をかがめると、強い電気の光で、昼間と変わらないくらいハッキリと、自分の下着姿が映っていた。
もう私、本当に…普通に下着のまま外に出てる人だな。どうしても冷静にならずには居られないらしい私は苦笑して鏡から顔を背けた。しかし冒険心は旺盛な性格なので、もっと思い切ったことをしたいと思い、この廊下の端…私の部屋から離れ、三階の他の住人のドアの前を通って、二階へと続く階段の手前…まで、たたっ、と走った。
車が何台も止まっていた。真っ暗なので車の中に人が居るのか分からないが、私が居るところは電気のせいで完璧に見えてしまっているだろう。こんな遅くに人が乗っているとは思わないが…。しかし見晴らしの良いこの場所からは、他のアパートのカーテンの開いた真っ暗な窓なんかも見えて、車と同じ理屈で私の姿はハッキリと見られているかもしれない。
「もぉ…えっちになっちゃぅょ…。」
私は鏡を見るのも忘れて、ブラジャーのフックを外した。少しためらいながらも磨りガラスの塀に隠れないように、ぽろん…と2つの胸をあらわにした。