「……………な?」
不意に、真幸が何かを言った気がした。
「え?何?聞こえないよ」
滝のような激しい雨のせいで、よく聞き取れない。
「俺……え…………やから…く?」
え、マジ聞こえないんですけど。何か聞かれてる…のよね?
私が返事に困っていると、急にブレーを勢い良く真幸の背中にぶつけた。「…っ!!」声にならないほど痛い。
私をチャリからおろした真幸はそのままどこかに消えていく。
え、…と、置き去り?しばらくぽかんとしていると、真幸が帰ってきた。正面の建物を指しながら、何か言っているが、聞き取れない。
…雨宿り…したいのかな?
しびれを切らした真幸は私の手を引いてその建物の中に入っていく。少し横顔が赤らんで見えた。
その理由はすぐに分かった。この建物は真幸の部屋のあるマンション。そう、雨宿りは真幸の部屋で、である。