「……にぃ!佑兄ぃ!」
呼ぶ声に目を開ければ、先程まで腕の中にいた存在がいつもと変わらない表情で自分を見下ろしていた。
現状を把握するまでに約5秒。
アレは夢だったと把握するまでに約5秒。
目の前の存在に見惚れて更に約5秒。
(夢…?そうか…夢、だよな…。あー、イイ所だったのにな〜)
暫く思考に耽っていると、頭上から再び声が降ってきた。
「祐兄ぃ…。朝から元気なのは良いけど、早くしねぇと遅刻すっぞ?」
「あ?」
言われた言葉に僅かに眉間に皺を寄せる。
何が元気なものか。
イイ所を起こされて寧ろ凹んでい…る?
「うぉあっ!?」
自分の状態までは把握しきれてなかった。
目線を下げれば自分を主張する下半身が目に入る。
情けない。
いや、モノ自体は立派なモノだと思うが。
よりにもよってコイツの前で…。
「とっとと済ませて降りて来いよ。いい加減おばさんキレるぞ?」
そう言いながら元凶の男(責任転嫁)はドアへと歩く。
憎たらしいことに、部屋を出る前にご丁寧に爆弾を投下して行きやがった。
「手伝ってやろうか?」
「ばっ…!出てけっ!!」
多分俺の顔は赤くなっているだろう。
「是非お願いします」 と本当はお願いしたかったのだが流石に言えなかった。
でも、今の言葉で更に大きくなってしまった事は本人のみぞ知る。