しばらく力が入らなかった夕陽を、痴漢はずっと抱きかかえ、降りる駅に着くと、人混みに紛れていなくなっていた。
『痴漢…嫌だったのに……すっごい気持ちよかった……あの人…私を知ってた?…同じ学校…の…人?』
小声で呟いた。
その日、夕陽は少し遅刻したが学校に行き、あの痴漢を探した。
しかし、見付からなかった。
夕陽は、不思議と、痴漢されたという意識はなく、ただ彼に会いたかった。話をしたかった。
その日、委員会で帰りが遅くなった夕陽は、社会人の帰宅ラッシュの混雑した電車に乗っていた。
今朝の事を思い出し、動きにくい車内で、痴漢の男を探していた。
結局見付からずに、電車を乗り換え、人のいないボックス席に座り、夕陽はうとうととし始めた。
数分後、向かいの席に誰かが座った気配がした。
珍しいな…。
夕陽は、眠い頭でそう思っただけで、他にも空いてるのになぜここに座るのか…などの違和感も感じずにまた眠りにつこうとしていた。
すると、今度は自分の隣に人が座る気配を感じた。
さすがに、かばんなどが邪魔にならないよう姿勢を直そうと目をあけると、隣には今朝の痴漢が座っていた。
驚いて声が出てしまった。
しかし、人の少ないこの電車で、夕陽が乗っている車両は夕陽たちだけだった。
男は、夕陽の耳元で呟いた。
『さっき、誰を探してたの?』
言い終わると首筋にキスをしてきて、夕陽はおもわず感じてしまった。