昼に誓ったはずの決意が早くも崩れ去りそうな勢いです。
「おばさん、お風呂ありがとーございましたー」
夕食を食べに来ていた彬は、ついでだから風呂も入って行けという俺の母の言葉に素直に従った。
風呂から出てきた彬はTシャツに短パンというラフな出で立ち。
それなのに濡れた髪や暖まって少し上気した肌はシャンプーの良い香りを撒き散らすと共に、妙な色気まで撒き散らしていた。
「佑兄も風呂入ったら?」
「ああ」
「あのさ、数学で教えて欲しいとこあるからさ、後で俺んち来てよ」
「なんで教えてやる立場の俺がお前んちにわざわざ行かにゃならんのだ」
「いいだろ、たまには。佑兄最近俺んち来る事無いじゃん?」
「…そうだっけ?」
「そうだよ」
本当の事を言うと、彬の家に行かなかったのはわざとだった。
おじさんが家を空けている事が多い為、自然二人きりになってしまうのだ。
それはなるべく避けたかったから。
「いいじゃない佑樹。久しぶりに彬君とこに泊まってきたら?」
「母さん!?」
「あ、そうだね佑兄。泊まっていきなよ。どうせ明日は休みなんだしさ」
なんて事を仰るのですか母上。
人が避けていた事を…。
「昔はよくお互いの家に泊まりに行ってたじゃない。何か問題があるの?」
「い、いや…別に…」
問題大アリデス。
「じゃ、決定ー」
彬が小悪魔に見えてきた。
俺の気持ち知っててわざとやってるんじゃないだろうか。
好きな奴と二人きりなのに何もできないなんて。
生殺し状態じゃないか。
俺の理性よ、切れないでおくれ…。