「………彬?」
ちょっと待て。
今、彬は何と言った?
これは告白と受け取ってもいいのか?
いや、まさか。
でも彬は俺がいいと確かに言った。
…………。
落ち付け俺。
「ゴメン。急にこんな事言い出して。気持ち悪いよね?男同士なのに」
忘れて、と言いながら彬がベッドを立つ。
その表情が泣いている様に見えてズキリと心が痛んだ。
俺は怖くて言えなかった事なのに彬は正直に言ってのけた。
「今日、ウチに泊まらなくていいから…」
背を向けようとした彬の手首を咄嗟に掴んで引き寄せた。
突然の事に対処できなかった彬が引き寄せられるままに俺の腕の中に倒れ込む。
持っていたグラスが床に転がり、グラスに残っていたお茶と氷がフローリングの上に広がっていくのを視界の端で捕えながら、彬を抱き締めた。
「佑…兄…?」
「ゴメン」
「なん…で…?」
「…ゴメン」
彬の首筋に顔を埋めて抱き締める腕に力を込めた。
それに応える様に彬の腕が戸惑いがちにそろりそろりと背中に廻される。
「佑兄…」
「うん」
「ずっと…、ずっと好きだったんだ」
「うん」
腕を緩めて彬の顔を覗き込んだ。
涙の滲んだ瞳がとても綺麗で魅せられる。
「俺もお前の事が、好きだった」
今まで言えなかった想い。
一度口にしてしまえばもう止められない。
どちらからともなく合わさった唇。
俺は「兄」の顔を捨てて、唯の「男」になった。