涙で視界が霞む。
ギュッ!
手を握られる。冷たくてさらさらした手。
グイッ!
引き寄せられる。
「?!」
顔をあげると彼だった。
私をドア付近に引っ張り、寄り掛からせる。その前に彼が立ちはだかる。
混雑した車内から、隔離するように両腕で私を囲む。手で涙を拭き、彼を見上げる。
心なしか、赤くなっている???
彼は、外の景色を見ながらときどき私に視線を戻す。男の子なのに、睫毛長いんだぁ。鼻筋がとおっている。綺麗な肌。つくづく、整った顔立ちだなぁ、と思う。その上、T学院のブランドをまとっている。
私は、濡れている下着を忘れるほど、彼を観察していた。
『なに?』
問い掛けるような彼の視線『ううんっ』
少し首を振る。
身体の火照りが冷めていくようだった。代わりに頬が染まっていく。
「次は、榴ケ岡〜」
車内アナウンスが聞こえる。涙も渇いていた。降りなきゃ。
「!」
ハッ!となる。T学院って、駅、二つ前じゃなかったっけ?
顔をあげる。
彼は相変わらず、涼しい顔をしていた。
《ごめんなさい》?
《ありがとう》?
何か伝えなきゃと思うのに、言葉が出ない。
プシューッ
反対側のドアが開く。