情事のあと、私たちは一緒に登下校する仲良しカップルのように、手をぎゅっと握り、駅を降りた。知らない駅だった。
「高村透」
思い出したように、彼が名乗る。
私はコクンと頷く。
「斎藤杏奈」
確かめるように、私の名を呼ぶと、ぐいっと私を引き寄せた。
「知ってたよ、杏奈」
「?」
「よく痴漢に狙われていたから。かわいいしね」
彼にかわいいと言われ、顔が赤くなる。
「いつも頑張って抵抗していて、健気でいじらしく見えた」
恥ずかしさで彼の目を見れない。
「必死なのがかわいい」
「いじわる」
「なんとでも言って」
彼は子供みたいに笑う。私は拗ねる。
「この間」
「?」
「この間、なんで助けてくれなかったの?泣いたら守ってくれたのに」
彼は、ふと真顔になり、それから、また笑った。
「だって、アレ、俺とやっていたんでしょ?」
「!!」
恥ずかしくて、彼を見れない。
彼は横から私の顔を覗きこむようにキスをしてきた。「杏奈のおかげで2回も学校さぼっちゃったよ。俺、優等生で通しているのに」「ごめん。。。」
なぜか謝っちゃう。
「せっかくだしホテルいこうっか?」
少し照れながら頷いた。痴漢さんなのにね。 『完』