朝、彼は何時もの様に予備校へ自転車に乗って行く。外へ出た時、彼は隣の家に視線を向けた。其処には、長く美しい黒髪に大変容姿が美しい女が立っていた。視線が合う…彼は彼女の美しさに心が騒いでいるのに気が付いた。
「おはようございます。お仕事ですか?」
彼女の澄んだ美しい声に、彼は即答出来ずに首を振り黙って自転車に乗って行ってしまった。彼女の声に彼の心が騒ぎ、身体が熱くなって行くのが判っている。
「すげぇ、美人だなぁ…あの人。あんな美人、見た事ないよ」
彼は独り言を言いながら自転車を漕いで予備校に行った。
予備校に行き授業を受けて授業が終わると、何処も寄り道をせずに真っ直ぐ帰宅した。帰宅すると今朝会った美女がリビングにいた。
「アンタ、ぼーっとしないで挨拶しなさい」
彼の母親の声で、彼は何も言わないで頭を下げた。
「息子の優です。愛想がなくて、ごめんなさいね」
「いいえ、気になさらないで下さい」
彼女の声は彼の耳に心地よく響いた。
「俺、勉強するから」
彼は一言言うと、二階の自室に戻って行った。
彼は机に向かっても、勉強する気が全く起こらなかった。彼女の事が気になって仕方なかった。勉強に身が入らない事で、何か気分転換をして見る事にした。漫画を見たり、雑誌を見たり、色々としたが彼女の姿と声が頭から離れない。窓から景色を見る事にすると、丁度彼女が自宅に戻ろうとしている所だった。慌てて窓を開けて話し掛けた。
「お姉さん、名前なんて言うの?」
彼女は話し掛けられて、声の主を探している。そんな姿の彼女に彼はもう一度話し掛ける。
「こっち!二階だよ」
声の主が誰か判り、彼女は顔を上げて上を見た。
「叶 美佳です」
「俺、山田 優。宜しくね、美佳さん」
彼に向かって彼女は微笑んで軽く会釈をした。彼女の微笑みに彼は顔が紅潮しているのが判った。彼は彼女に好意を抱いてしまったのだった。