直ぐに彼女はリビングに戻ってきた。
「優さん、コーヒーを切らしていたのを忘れていたの…御免なさい。紅茶でもいいかしら?」
「あ…いいですよ」
「切らす事は無かったのよ、本当に…今度は、用意しておくわ」
彼女はキッチンに戻って行き、彼は彼女が来るまでリビングを見ていた。質素な家具で統一されており、カーテンは明るいオレンジとレースのカーテンで二重になっている。オレンジのカーテンは開かれて、替わりにレースのカーテンが引かれていた。日の光がレースのカーテンを通して、部屋に入って来ている。柔らかい光になって部屋を照らしていた。
床はフローリングになっていて、玄関から入った時に段差が無い事に気が付いた。彼女の自宅はバリヤフリーに対応している住宅だと彼は思った。
彼は落ち着かないまま、彼女が来るのを待つしかなかった。暫く経って、彼女がリビングに姿を現した。両手に大きなトレーを持ち、テーブルの上にトレーを置いて紅茶が入っている陶器のポットを置き、次に白くて綺麗な陶器のカップをテーブルに置き、次に砂糖が入っている皿を置き、次にミルクが入ったポットとレモンが入ったポットを置いた。
彼女は鳴れた手付きでカップに紅茶を注ぎ、カップに置いてあるスプーンに切って更に並べてあるレモンを置いた。
「お好みで、レモンかミルクを入れてね。こちらはお砂糖だから」
彼女の爪には薄く淡い色のマニキュアが塗ってあった。しなやかで細く長い綺麗な指…白く繊細で触れたら壊れそうな手に彼の視線は釘付けになっている。彼の心臓が早い鼓動を打っている…彼女の顔を見ずに熱い紅茶を慌てて一口啜った。
「熱っ!」
彼はあまりの熱さに紅茶が入っているカップを持っていた指が緩んでしまった。紅茶が入ったカップは彼が刷いているジーンズの太腿を濡らした。彼は慌ててソファーから立ち上がり、彼女は彼の慌てている姿に急いでタオルを持って来る為に席を離れた。
彼は自分がしてしまった失態に対処出来なくなっていた。彼女は彼のジーンズを慌ててタオルで拭いた。
「優さん、火傷してない?大丈夫?」
「うん…大丈夫、美佳さん」
彼はソファーに座ったまま、彼女に紅茶で塗れたジーンズを拭いて貰っていた。彼の視線は彼女のブラウスから除く胸元に向けられていた。彼は気が付いてしまった…彼女が下着を着けていない事を…。