噛みつかれ、赤く腫れた肩をひと触りし、ヨシトに目もくれず、タバコに手を伸ばす。
「ナオさん…本数、多いですよ?」
「うるさい。関係ない。」痛めつけるように、立て続けに3本吸った。
あの時の男の記憶は、いつも鮮明だ。触れられた時の感覚も、幼いながら防衛本能からくるあの液体の垂れた軌跡。生々しく残っている。初めて私に『恥辱』を教えた。警察にも、担任にも、哀れみと好奇の眼差しで見られる事。忘れなさい、と、言う親。
でも、植え付けられたあの記憶だけは、絶対に消えないシコリのように、残り続けている。