周りが見えない。ここはどこだろう?少しずつ頭が回転していく。腕は後ろ手に縛られているようだ。体を動かすと座っている場所が大きく揺れた。という事は割と軽めな椅子に固定されているわけだ。耳を澄ます。時計の音だけが不気味なほどに響く。この空間に漂う匂い。前にどこかで…
「久しぶりだね…」
突然耳元で低く囁かれた。身体がビクリと反応する。
『…せ…んせい?』
恐る恐る聞き返した。医師であった岡田真弥は以前私が不倫していた男だ。自然消滅で終わり、現在私はフリー。引きずっているわけではないが恋愛はしばらくいいやと言う感じだ。記憶がまだあいまいだが、休日にたまたま出くわしてそのままドライブに向かっていた気がする。きっとここは単身の彼が私を何度も抱いたアパート。
「春奈があんまりキレイだからまた抱きたくなっちゃったよ…」
何を言ってるんだろう。今更叶わない恋愛はしたくもないし特別な感情はもうないのに…
『先生、困ります!私もう先生の事…』
顎を持ち上げて岡田は口づけてきた。
『…ンフゥ…ンンッ!』
喋れない。でも私は抵抗する。唇の隙間をぬって声を上げる。
『まっ…てぇ!ンクッ…ンンッ!ンンッ!おねが…ウウンッ』