鍵を開けて家に入ると、メールが届いていた。
同じクラスの、好きな子からのメールだ。
高鳴る胸を抑えて、早速開いてみる。
「明日、一緒に学校行ける??」
思わずガッツポーズをしてしまってから、慌てて周りを見回す。
…誰もいる筈ないのだけれど。
片思い歴7ヵ月。
この恋が、成就する予定はない。
だってそんなの自然の条理に反してる。
別にいいんだ。
俺は見てるだけで…
少女マンガみたいな切ない気持ちで、返信を打った。
次の日。
俺は少し寝坊した。
ホームに着くと、聞き覚えのある声。
「早くー!!発車しちゃうよ!!」
走って電車に駆け込む。
電車が走り出して一息つくと、さっそく小言が降ってきた。
「ばかっ。俺一人になるとこだったよ」
俺は顔を上げた。
慶介はちょっとむくれている。
それもまた可愛らしい。
白い頬にうっすら赤みが差している。
俺が来て安心したからだろうか…?
慶介は中3になったとたん、顔つきが大人っぽくなった。
今まではただの白いお坊っちゃまといった目立たない容貌だったのが、顎はほっそりするわ足は伸びるわで急成長を遂げ、女子からの人気を急上昇させ今に至っている。
俺はいつ女子に慶介を盗られるか気が気でない…。