頬を普段より冷たい空気が撫で、ふと見上げると雪だった。
灰色の空からとめどなく散るきれいな白。
(あいつと別れたのも、雪の日だった…)
自分の頬を伝う涙に気付いて、思わず苦笑した。
五年も前のことなのに。
どこにでもあるような恋だったのに。
私の心はまだ、中学生のままなんだ…
電車で二時間、新幹線で三十分。そこからさらにバスで十分。
私の通う国立大学のキャンパスは、とんでもない田舎にある。
今は大学二年。単位を落とさなければ、もうすぐ三年になる。
「ミナ??講義始まるよ??」
「茜…先行ってて」
「先行っててって、講義ここでやるんだけど…プリントだよ!!取りにいかなきゃ!!…あ、ありがとー」
茜は前の席の男に愛想良く笑いかけた。
プリントをわざわざ持ってきた茜の彼氏は、赤くなって俯いている。
こんなざまじゃ、Hどころかキスだってできないんじゃないだろうか。
私は彼を横目で見ながら席についた。