とっさの出来事に声も出なかった。そのまま公園のフェンスに背中を押しつけられる。口は塞がれたままだ。暗闇に、フェンスの歪んだ音が響いた。
「…先ほどはどうも。」
手の感じと声で男だと分かる。ぼんやりとした街灯では、顔までは分からない。声は、若い感じがする。背も高い。 「人につまづいといて、あんな謝りかたはないよな〜。」
あ、電車の…?もしかして、追いかけてき…たの…?恐怖で顔がひきつる。逃げたい。男は、逃げようとした私の両肩をぐっと掴んで押しつける。
「痛っ…。ご、ゴメンな…さい…。」
恐怖のあまりに、何を言っていいのか、何をしたらいいのか分からない。ただ首を振る。恐怖でうっすらと涙がにじんでくる。男は、自分の足を私の間に割りいれ、私の両脇のフェンスを掴んだ。思わず目をつむる。すると、男は私の耳元でこうささやいた。
「何?自分でかわいいとでも思ってやってんんの?」
男の声が私の体に響いた瞬間、ぞくり。背中を冷たいものが走る。嫌悪感とは違う何か。恐怖とは違う何か。思わず顔をあげる。その瞬間、私は唇を塞がれた。男の手ではなく、…唇で。
「…んんっ!」
男を押し退けようともがいたが、両手首をつかまれてしまった。首を振るが、男は構わない。舌でこじあけ、難なく入ってくる。クチュクチュと音をたてる。濃厚なキス。男のキスは、私の抵抗する力を奪ってしまった。
「…んっ、…ぁっ、…んは…」
男は、執拗に求めてくる。私は、立っているのがやっとだった。二人の舌を、甘美な糸が伝う。思わずフェンスにもたれかかる。
「…もしかして、キスだけでイッちゃった?」
フェンスにもたれかかった私の耳元でささやく。
「…あっ」
その声に反応してしまう。私の芯は疼いている…。