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涙の天使…2

冴凪 瑞羽  2006-11-12投稿
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序章…天使の歌声


オレは切り立った崖の上に建つ教会に来ていた。
崖の下に広がる海からの風が心地よい。


ふと気付くと、どこからか歌が聞こえる。
ひどく優しく美しい、そして悲しい恋の歌。


それは教会の裏手からだった。
シスターが一人、遠い海に歌を奏でていたのだ。


"どんな時も 忘れなかった
あなたの声も 瞳も
すべてが好き
あれからの5年間
忘れられなくて…"


その人の瞳がオレを捕らえた。

…歌がとまった。

瞳が潤み、ひとすじの雫が頬をこぼれた。
途端に踵を返し、その人は駆け出す。


「っ莉架ぁ!!」

たまらずに叫んだ声は、うまく発せられていたのだろうか。
刹那、莉架は振り向き、またなおもオレから遠ざかろうと駆ける。
風には、甘い滴が溶けていた―――。



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