「ごめんね…」
「お母さんは何してたのかねぇ」
マコトに赤ちゃん言葉で話しかけるお父さん。
かなり歩いたらしい。体も充分暖まってマコトは寝てしまった。
「可愛いもんだな…」微笑ましい…
「お父さんが、おじいちゃんか…」
「よせよ」
おじいちゃん、という響きは苦手みたい。
それにしても、にわか雨だと思ったのに、長く降りそう…
私は慌てて取り込んでいた洗濯物をたたんでいる。
お父さん…
…?
隣りの部屋でマコトの寝顔を見てたはずなのに、いつの間にかソファから私を見てた。
目がちょっと合った。…袖なしのワンピース…少し胸が開きすぎてる…かな…気恥ずかしい…
また目が合うと、お父さんは慌てて咳払い。こそこそと何か探し始めた。
「…何?」
「えっと…ライターライター」
タバコなんか滅多に吸わないくせに…
そこにあるじゃない…私はお父さんの足元のを取った。
「はい…ライター」
「あ」
手渡そうと…下から…
お父さんの目が…私の胸に釘付けになった…
遠くで雷が鳴っている…
すごい雨…
お父さんは私をじっと見つめたまま、ゆっくり腰を下ろした。
視線をそらせない…
ゴロゴロゴロ…また空が鳴った…