「季吹?何か顔色悪くないか?」
秀太郎に気づかれた。昨晩、ファミレスでずっとエアコンに当たっていたせいか、朝からずっと寒気がしていた。
「大丈夫だし。何でもない。」
私は秀太郎から離れ、作業に集中した。秀太郎はすぐに私の隣に寄って来て小声で話した。
「バイト終わったら待ってろよ。」
それだけ言うと私から離れて行った。
バイトが終わり、私はフラフラになりながら階段を降りて駐輪場へ行った。秀太郎を待つことなど考えられなかった。
「やっぱりな。」
秀太郎は私より先に駐輪場で待っていた。
「後ろ、乗れよ。」
秀太郎は私にヘルメットを渡すとエンジンをかけた。
「いいよ…。自分で帰れ…。」
言い終らないうちに頭がグラグラしてその場に私は座りこんだ。
秀太郎は黙って私の頭にヘルメットを被せ、私を抱き上げてバイクの後ろに乗せた。
「捕まってろよ?」
秀太郎はゆっくりとバイクを走らせた。秀太郎の背中は広くて優しい匂いがした。