秀太郎は私をバイクに乗せてそのまま走った。私は母の醜い声を聞かれたことと、体がだるいことでどうでもよくなっていた。
気づいた時には秀太郎の部屋にいて、彼は私に水と風邪薬を私、彼のベッドで寝かせてくれた。
秀太郎はタバコに火をつけようとしたが、私を気づかって灰皿にタバコを置いた。
「伊吹くん…。ごめんね…。」
私は申し訳なく思った。
「気にすんな。早く寝ろよ。」
優しく秀太郎は微笑んでくれた。
「ひどい事言ってごめん…。」
あんな言い方をしたのに、秀太郎はこんな私に優しくしてくれる。
「いいからもう寝ろよ。」
「あの…。」
「何?気持ち悪い?」
「違う…。母のこと…。」
「言わないよ。だから安心して寝ろよ。」
「ありがとう…。」
母でさえ私を気にかけてくれたことはなかった。全くの他人である私を思いやってくれるこの人。男嫌いの私に初めてできた男友達。感謝の気持ちでいっぱいだった。
翌朝、目が覚めると気分が良くなっていた。ふと私の頭の下敷になっている秀太郎の腕に気がついた。
「うわっ…!」
私は驚いて跳ね起きた。
「おはよ…。気分は?」
秀太郎は寝癖のついた頭のまま体を起こした。
「良くなった…。」
「そか。」
秀太郎はニッコリ笑った。
「シャワー使うだろ?」
私にタオルと着替を渡すと秀太郎は外へ出た。
「コンビニ行ってくる。」
そう言い残して。
朝日の眩しい日だった。