「ねぇ。時々バイト休んでどこ行ってるの?」
私は秀太郎の横顔を見ながら尋ねた。整った鼻と長い睫毛が月に照らされて影になっている。
「あ… うん…。」
秀太郎は少し戸惑うようにタバコの火をつける。
「言いたくなかったら…。」
私が言い終わる前に秀太郎が口を開いた。
「カメラマンのアシスタントしてるんだ。」
私は驚いた。
「えっ…!?秀太郎が!?」
「うん。高校生からずっと。」
私の知らない秀太郎の世界がある。写真という世界。
「すごい!」
「すごくはないよ?パシリみたいなことしかしてないし。」
秀太郎が少し照れながら答える。
「カメラマンになるの…?」
「うん。なれたらいいなぁって。」
秀太郎は将来を考えている。私は生きる事が精一杯だったために、卒業後の事は何も考えていない。
私も何か探そう。秀太郎のように夢中になれるものを。追いかけられるものを。
私たちは空を眺めながら今日一日の話をして、ベッドに入った。
今日も秀太郎の腕に頭を乗せて眠れる。この瞬間が幸せだと思った。
「なれるといいね。」
私は天井を見ながら秀太郎に言った。
「うん。」
秀太郎の嬉しそうな声が聞こえた。