その日は日曜日。もうすぐ夏休みを迎えようとしていた日だった。
「季吹。ちょっといい?」
「うん…?」
秀太郎は私を座らせた。とても真面目な顔をしていた。
「あのさ、あとどれくらいで資金できそう?」
秀太郎は少し申し訳なさそうに私を見た。
「あ…再来月にはたぶん…。」
秀太郎慌てながら言った。
「違うんだ。出て行って欲しいとかじゃないんだ。」
いつもと違う秀太郎。迷惑だったのかと私は思った。
「うん…。ごめんね。考えて見れば私は居候の身なわけだし…。」
よく考えれば他人と一緒に住むなどとても大変なことだ。家賃は一応払ってはいるが、ほとんどは秀太郎が持ってくれている。
「そうじゃなくて…。実はさ。」
「うん。」
秀太郎は何か困ったような顔をしている。
「俺、今の大学を辞めるんだ。」
「えっ…?」
私は動きを止めた。
「前から決めてたんだ。アメリカの学校へ行くんだ。」
胸がうるさいほど高鳴っていた。秀太郎がいなくなる。その事実に動揺を隠せなかった。
「カメラのため…?」
私はうつ向いたまま尋ねた。
「うん…。今月末には…。」
「あ…そうか…。」
外では蝉がうるさく鳴いていた。
私の胸は締め付けられた。