「本当に綺麗ですね。あなたは」
変態…
【黒豹】
「おかえりなさい。」
学校から帰ってきた僕の顔をマジマジ見るなりトイレから出てきた様子の彼はそう言う。
「?…どちら様ですか?」
何だコイツ…少し長いボサボサ髪にかなりラフな服…。何か…いかにも苦学生って感じだ。眼鏡がそれを引き立たせてる。
「久しぶりですね。」
「…」
知らないんだけど…。
丁度、リビングから母親が顔を出す。
「あ、ハルキ帰ってきたの?」
「あ、うん…」
僕は母親に目の前の男の不審さを目で訴える。
「ハルキ覚えてないの?澄(スミ)くんよ」
母さんはニコニコしている。
…?…てかさっきから何だコイツ…見すぎだ。
「まぁそうね。ハルキはあの頃「3才でしたね。」
澄と言う男はやっとその視線を母に向けながら話す。
「そうだったわね。ほら、お父さんのお友達の蓮(ハス)さん知ってるでしょ?」
「ああ…」
父が一番親しいと言ってた人だ。よく家に来たり。2人で飲みに行ったりしている。
「その人の息子さんよ。昔よく遊んでもらってたんだけどね。」
「そうなんだ。」
3才だ。そんな記憶覚えてない。
「最近までアメリカに留学してたんですって。今日はたまたま近くに来ていたそうでさっき呼んでもらったのよ。」
僕は視線を彼に戻す。まだ彼は僕を見ている。
気持ち悪いな…なるべく直視はしたくない。
リビングに出向くと蓮さんと父が飲んでいて簡単に挨拶を交わした後父に澄という男について少し話をされた。
とりあえず分かった事。
奴は苦学生でも何でもない。特に勉強はしないが常に成績などトップをキープしていたらしい。
いわゆる天才肌というやつか…。
こんなだらしなさそうな男が…。
僕は少し彼に視線を向けようとしたが止めた。
いやでも視界に入るあの鋭い眼が痛くて仕方なかったから。