女性でボクシングやキックボクシングでダイエットを計る人口はかなり増えている。
大学生の月村愛子も近くのキックボクシングのジムにエクササイズで通っていた。
通いはじめてから1年がたって今は自分でも結構いいプロポーションになれてると思う。
遊びでやるスパーリングも楽しくて、ジムのインストラクターがおだて半分に手を抜いて打ち合ったり打たれたりしてくれるせいでかなり強くなった気にもなっていた。
格闘技雑誌に載る女性のプロ格闘家の記事を見ていて自分の方が強いんじゃないかとさえ思っている。
顔だって私の方がかわいいし・・・。
なんて考えていたりする。
ただプロの自己管理の厳しさを知ってるだけに本気になってやるつもりはなかった。
合コンとかクラブ遊びなんかの方が大事だったし、トレーニングでごつくなるのが嫌だった。
ある日のジムの帰り
歩いて帰る愛子の横に突然として黒塗りのワゴン車が止まり、出てきた男達に薬を嗅がされ愛子は気を失って連れ去られた。
「起きなさい」
声に反応して目が覚めるとそこは刑事ドラマの取り調べ室を連想させる狭い部屋だった。
パイプ椅子に縛られた愛子の他に黒いスーツの屈強そうな若い男が二人と背の低い小太りな初老の男が一人、愛子を見下ろすように立っていた。
若い男の一人が整理のつかない愛子に拉致した事を淡々と伝えた。
悪びれる言葉もそぶりも微塵もない。
「帰してください・・・」
通らないと解っていても愛子は懇願するしかない。
「まあお嬢さん、話を聞きなさい」
初老の男がにんまりと顔いっぱいに笑みを浮かべて愛子をなだめた。
「私達はあるショーをやっていてね、お嬢さんには想像もつかないくらいの権力者や金持ちがそれを見にくるんだよ。やる事は毎回違うんだが・・・」
老人はいったん言葉を止めてまたあの笑みを浮かべながら愛子を値踏みするように上から下まで眺めると
「今回はお嬢さんに出てもらおうと思ってな」
そう言ってホッホッホッと笑った。
「へ?」
愛子は意味が解らずに間の抜けた声をだした。
老人は笑顔を崩さずに愛子を無視して続ける。
「なあに簡単じゃよ、お嬢さんは金網の箱の中で格闘技をやってもらうだけじゃ。お嬢さんが勝ったら解放してあげよう。しかもタダじゃない、金持ちがたくさん見にくるショーじゃからな。なんと勝ったら一千万じゃ」
老人は昔話に出てくる老人のような大げさな口調で説明するとまたホッホッホッと笑った
続