久しぶりに、春日が登板する試合をテレビで見た。「良い球、投げれてるじゃん」
あの頃と変わらない、繊細で綺麗なフォーム。そこから繰り出される球は、早くて、力強い。
相手のバッターも、手を出せない。
無失点無出塁で抑えて、試合は進んで行く。
しかし、5回の裏、相手の攻撃のとき、異変が起きた。
初めて、敵にヒットを打たれたのだ。
それからは、ヒットとフォアボールの嵐。
味方の援護で5-0と離れていた点数も、じりじりと縮まってくる。
高校の頃、春日の投球はすばらしかったが、一つだけ弱点があった。打たれ弱いこと。
一度打たれると、立ち直る事が出来ないのだ。
そういう時は、智佳史がマウンドに行き、春日を励ますのだ。
『春日は、世界一の投手だよ。大丈夫。自分の球に自信持って』
そうすると、春日は落ち着きを取り戻すのだった。 点数が、1点差に縮まった時、春日はマウンドを降ろされていた。
会いたい―。
会って、抱き締めて、慰めてやりたい。
これが『好き』って、感情なのかどうなのか、智佳史は分からなかったが、携帯を取り出すと、春日にメールを送った。
『会いたい』