「これに着替えろ」
愛子が体をほぐしているとドアが開けられて紙袋を渡された。
中身を広げてみると赤い布切れと総合格闘技に使われる殴るだけじゃなくて掴んだりする事ができるオープンフィンガーグローブ、そしてスネ当てが入っていた。
赤い布切れを手にとって広げてみる。
「何よ、これぇ!」
布は水着だった。
それも二つに別れている。
上は紐のないチューブトップのブラ、下もビキニで生地が多いとは言えない。
動き回るだけでブラはとれてしまうかもしれない。
はじめから私に勝ってほしいものではないのだから仕方ないよね。
愛子はうんざりしたようにため息をついた。
愛子が着替え終わる頃、ついに呼び出しがきた。
「時間だ、着いてこい」
愛子は胸に手をあてて何かつぶやくと意を決したように口元を引き締めて出口に向かっていった。
「場内アナウンスで名前を呼ばれたら入場だ、あとは適当にやれ、せいぜい暇な金持ちどもを満足させてやんな」
入場口と書かれた扉で待っていた男は愛子を一瞥するなりそう言うとどこかに行ってしまった。
こっちは理不尽にも体を賭けさせられてるのに適当な説明で適当にやれと言う。
なんだかますます腹が立ってきた。
絶対に勝ってやる・・・。
5分後、
『皆様たいへん長らくお待たせしました!ご好評のメインイベントのお時間でございます!若き戦乙女が富を勝ち取るか、はたまた野獣となった男が乙女の体を貪るのか、まばたきせずに御覧下さい!
まず赤コーナーよりぃ、160cm48kg!今宵の戦乙女!愛子選手の入場です!』
両開きになっている入場口の扉がゆっくりと開かれていく。
扉が開ききるとたくさんのスポットライトが愛子にあてられた。
驚いた愛子は手をかざして顔にあたる光をさえぎろうとしながらとぼとぼと歩みを進める。
会場は広さをそれほど感じさせなかったが天井がかなり高いことに気付いた。
何メートルあるのだろう。
円錐を逆さにしたような造りで壁に観客の姿が見える。
昔、何かで見たオペラの劇場に似ていた。
更に驚いたのは試合をする大きな金網の箱の真上にそれよりもはるかに大きな大型ビジョンが天井からぶらさがっていた。
もし私が負けたら・・・つまりセッ○スさせられたらあれにでかでかと映されるのだろう。
愛子は想像しただけで鳥肌がたった。
続く