愛子が金網の入り口から中に入ると入り口は閉められてしまった。
そして頭上の大型ビジョンに立ち尽くす愛子の肢体がアップで映し出される。
上から下へ
舐めるように
「おお〜」
会場全体から感嘆ともこれから起こるであろう艶劇の期待ともとれる声が漏れた。
愛子は自負する通りなかなか美しかった。
目元の涼しい美人顔、スポーツ好きで引き締められたスレンダーな体、ボクササイズのおかげでCからDほどある胸はつんと上を向いているし腰はくびれ、お尻も筋肉で引き上げられて脚を一層長く見せていた。
余計なたるみはまったくない。
胸元のドアップになる、緊張で上気して白い肌に赤みがかかって汗ばんでいるのまでわかる。
愛子は恥ずかしくなって余計に赤くなってしまった。
カメラが切り替わり今度は後ろから体を映す。
肩より少し先まである長い髪は邪魔だから後ろでまとめておいた。
腰やお尻も当然のようにアップになる。
客席からは愛子の肢体を誉めるような声や下品な笑い声など、歓談している雰囲気が伝わってくる。
並みの刺激に物足りなくなった金持ちの道楽・・・そんなところだろう。
怒りよりも馬鹿馬鹿しい気持ちすら覚えてしまう。
『続きまして、青コーナーよりぃ!161cm60kg、今宵の色に飢えた野獣!戦績は10戦全勝!太郎選手の入場です!』
太郎・・・名前に拍子抜けしかけた愛子だが会場に入ってこっちに向かってくる男を見て固まってしまった。
一見しておっさんである。
愛子とほとんど変わらない身長、サーファーみたいに焼けた肌をしているがかなり脂ののった腹をしている。
白髪のパンチパーマ、ぶつぶつとシミだらけの頬が張り出して顔は50代に見える。
何より暗くてよくは見えないが前歯が何本かなかった。
上半身は裸で下は虎柄の布を腰に巻いただけのようである。
股間をボリボリ掻きながらにやけた表情で愛子を見ている。
こんな不潔な人間を生理的に受け付けようがない。
ましてや体を許すとかありえない話だ。
太郎が反対側から金網に入ると同じように入り口は閉ざされた。
『両者中央に来てください』
アナウンスが聞こえて愛子は言葉に従った。
太郎は近すぎるくらい寄ってきた。
思わず身構える。
「姉ちゃん美人だしいい身体してんなあ」
言うなりいきなり胸を鷲掴もうと手を伸ばしてくる。
振り払うと太郎は下品な笑みを浮かべた。
続く