『両者、ルールを守り全力をつくして戦うように
礼!』
変なところだけスポーツマンシップがあるらしい。
とゆうか道化話だろう、会場のあちらこちらで笑いがおこる。
「ぐえへへへ、早く姉ちゃんの白い尻をひっつかんで出し入れしてえや」
太郎はそう言うとガハガハ笑いながらコーナーに戻っていった。
たまったものではない。
愛子も自分のコーナーに戻ると胸に拳をあてて気持ちを落ち着かせた。
『それでは始めてもらいましょう!15分1発勝負です!
ファイッ!
カァン!
ゴングが鳴った。
心臓がとびでるほど激しく鼓動している。
実戦?なんて始めてだから当たり前だ。
愛子はとりあえずキックボクシングの構えをとった。
プロで格闘技をやってる人からすれば隙がまるわかりなのだが。
「ぐへぇ」
太郎はとゆうと何も構えはとらない。
手を握ったり開いたりしながらじりじりとにじり寄る。
一方、愛子は構えをとってみたもののどうすればいいのかわからなかった。
スパーリングならもっとやりたい事をやれたのに、身体が重く感じる。
何もしていないのに焦りと疲労だけがたまっていった。
はやくも息があがりだす。
その時だった。
太郎が突然、両腕を横いっぱいに広げて突進してきた!
たいして速い動きではないが、愛子は緊張のあまり目を大きく見開いたまま身動きひとつとれないで太郎に接触を許してしまった。
「ひっ」
短い悲鳴とともに太郎に抱きつかれ、勢いのままに後ろの金網に突っ込む。
したたかに背中を打ち、なおも強くおしつけられる。
ハッとして目を開くと数センチの距離に太郎の汚い顔があった。
「おいおい、もう終わりか?」
すさまじい口臭を吐き出しながら太郎は残忍そうな笑みを浮かべた。
そして愛子の胸元の桃色に染まった肌に目をつけると鎖骨に沿うように舌を這わせる。
「い、いやああ!」
嫌悪感の頂点に達した愛子は突然狂ったように暴れだした。
がむしゃらにもがいたのが功を奏した。
愛子のおでこが顔を上げかけた太郎の眉間にぶつかり、太郎の束縛が一瞬ゆるんだ。
太郎の腕から愛子の右腕が逃れて横から振りぬく。
手打ちだったが実は格闘技がまるで素人の太郎は側頭部にもろに入った。
ダメージはろくに無かったが驚いた太郎は更に束縛をゆるめた。
愛子は考えるより先に太郎を突き放すと目一杯の体重をのせてローキックを放った。
続く