バスン!
ほとんど反射的に動いた愛子の右脚が太郎の左膝の外辺りに当たった。
1年間通った成果だろうか、なかなか様になっている。
スネ当てごしに確かな衝撃が伝わる。
付けてなかったら痛いのはむしろ愛子の方だったが・・・。
会場からは歓声が聞こえてきた。
よく聞こえないが実況までいるらしい。
こんな反撃をされたのは初めてだったのだろうか、太郎は少し下がって距離をおいた。
だが顔は笑っていた。
愛子は今の蹴りでいくぶん力が抜けた。
しっかりと構えなおす。
だが太郎は吹き出して笑いだした。
そして愛子を指差して言った。
「直さなくていいのかい?おっぱい」
愛子は太郎を警戒しながら視線を落とす。
なんと肩紐のついていないチューブトップのブラが下に胸半分ほどずれてしまっていた。
おっぱいが下からはみ出すように押し上げられてピンクの可愛らしい乳首が上向きに顔を出している。
「きゃあ!」
愛子は耳の先まで真っ赤になってとっさにブラを戻した。
会場内の歓声はこれだったのかもしれない。
太郎は気を乱した愛子に不意をつくように姿勢を低くして飛び込んできた。
だが羞恥に熱くなっていたが愛子はとっさに反射的に動けた。
ゴス!
愛子は膝を上げただけだったが、勢いのついた太郎には十分な衝撃となった。
まともに顔の左頬に入って太郎は崩れ落ちた。
「オオー!」
今度こそ本物の歓声が沸き起こる。
私やっぱ強いかも!
愛子は得意になって手まであげる。
太郎はすぐに起き上がったが頬を押さえ下をむいている。
愛子はチャンスと見て今度は自分から近寄った。
左からまわりこんで習っている唯一のコンビネーション、ワンツーの後にローをぶつけた。
小気味よい音に愛子はますます気をよくし、正面に回り込んでアッパーまで放つ。
さらに連打。
だが調子に乗りすぎた。
格闘技を習っているといってもたった1年間である。
しかもろくに鍛えてもいない女の子が精練されてもいない動きでいくら叩いたところで人を倒すのは無理な話だった。
太郎は愛子の右のミドルキックをしがみつくように受けとめるとそのまま引き倒してしまった。
愛子の顔に恐怖が浮かぶ。
一方の太郎は愛子の右脚を抱き枕のように抱えて乗ると、
愛子の顔を見上げて微笑んだ。
続く