何度、「睦又玲雄」という刻印を、体につけても、羽衣音は、玲雄のものにはならなかった。
体を繋げただけで、人の心が手に入る訳がないことぐらい、玲雄だって分かっている。
でも、逃げる蝶々を繋ぎ止める方法は、他になかった。
羽衣音自身に、そっと触れる。
それは、熱くて蜜をとめどなく溢れさせ、快感を示しているのに…。
「うぅっ…うっうぅっ…」 羽衣音が、喘ぐというより、泣いているような声を上げる。
泣きながら、じっと玲雄を見ている。
玲雄の事を、軽蔑しているような、拒絶しているような表情だ。
「いくよ、羽衣音…」
羽衣音の中に、玲雄の証を注ぎ込む。
「あっ…あぁっ…」
玲雄の手の中の、羽衣音も果てる。
「これで、満足か?」
情事の後、羽衣音は決まってこう聞いてくる。
「まだだよ。まだまだ全然足りないよ」
玲雄は、羽衣音を抱き締める。