「な・・・なんでここに?」 亨は震える声を振り絞って大揮に問掛ける。
大揮本人も知らなかったらしい。「なんでって、今日からここの家庭教師すんだけど」その時、拓也が二人の話に割って入ってきた。「えっ!?兄ちゃんと先生って知り合いだったの!?スゲー偶然!友達?先輩後輩関係とか?」 その質問に恥ずかしさを覚えた亨。関係といえば『H直前までした関係』だったからだ。「あ・・・拓也、部屋に案内しないと。すぐお茶持ってくから」その場から逃れようとする亨に拓也が話かける。
「神谷!・・・後で、話があるんだけど・・・」
返事に戸惑う亨は曖昧な返事をする。
「・・・時間があったらね」拓也と大揮は拓也の返事へ向かった。亨はキッチンへ向かい、さっき出した客用ティーカップにお茶を入れていた。「・・・・・・・・・」
(前は、1日会えるか会えないかで、桐生くんを見つけた時はすごく嬉しかったのに・・・今はなんだか微妙な気持ちだ。こんな時に限って偶然が起きるなんてな・・・。)
拓也の部屋の前まで来た亨はドアをノックする。ドアの向こうから拓也の声ではなく大揮の声が聞こえてきた。「今開ける」――ガチャドアが開き大揮が出てくる。「た、拓也は?」