シャー…、
やや温めの細かい水が気持ち良い。
腰から下の感覚が危うくて、結局狭い空間に彼を伴ったまま、肩に前からしがみつく形でようやくバランスを取りながらシャワーを浴びる。
「ごめんね、付き合わせて。濡れちゃった。」
「え?…や、俺は、別に…。」
優しく俺の腰を右手で支え、左手で気を使いながら背中を摩っている。
それが心地よかった。
「柚木さんこそ、その…、大丈夫ですか?こんな…」
「ん…」
心配そうに俺を見つめる顔が直ぐ傍にあった。
少し面長で黒髪がよく似合う精悍な顔。肌は日に妬け、少し色素が薄い茶色の眼が日本人離れした彼の容姿を更に魅力的に引き立たせていた。
「…、あ…。お前、もしかして今朝……」
「織部です。同じ陸部の一年です。」
「ああ…」
思い出した。
周りが話していた、噂のホープだ。
確か中学でも有名で他の部も引抜きが凄かったとか…。
「2度目、か…。」
フフッ、と笑うと、
「はい…」
織部も若干緊張気味だった表情を崩し、少し照れながら笑う。
それが大人びた彼の風貌から年相応の少年らしいさを醸し出していた。