「はぁーぁ?」
挙げ句の果て、この変態、伊野宏樹のセクハラ攻撃だ…ストレスは120%MAXだ。
前髪をかき上げるのは、彼の癖みたいだ。原稿を読み終えた伊野。ぼんやり、頬づえついて彼を眺める僕。
…12年前、僕が初めて伊野宏樹を見たのは…震災で、無惨に変わり果てた神戸市街地からの中継だった。
あの日の伊野は…。
被害の状況を伝える声は、鼻声でメガネの奥の瞳は、涙で揺れていた。
向こう側の世界の人間は、何もかもが完璧で、笑いもしなければ涙も流さない、平気で人の心に土足で踏み込み、ほじくり回し、引きずり出しては、面白可笑しくコメントを口走り、垂れ流す人種ばかりだと僕は思っていたのだった…。
だから、あの日、伊野の涙で揺れる瞳を見た僕は、ショックを受けた。
あぁ…向こう側にもちゃんと温かい血の通った「人」がいたんだ…と…。
それで、彼にどうしても近づきたくて、猛勉強して…ここまできたのに…こんな変態エロエロマン…だったなんて…。