それは明らかに今オレが、何者かに唇を奪われている証だった。
―…ッドン!グゥゥッー!!
押しても叩いてもびくともしない。
それどころか相手は自分の服が濡れる事もお構いなしに、更に体を密着させ唇を合わせてる。
「…うぅッ!!」
激しい攻防の間に体はどんどん熱を発してくる。
もう…
何がなんだか解らない内に相手の激しい動きに段々と抵抗する気力すら奪われそうになってきた…その時ー…
「はっ…!ッ!!?あれ?小宮?」
不意に口が解放され、湿気を含んだ新鮮な空気が流れ込んでくる。
「ツはぁー!はっはあ」
聞き覚えのある声が聞こえる。
「え?!まじ?!ッー嘘だろぉー!!?!」
その声の主はあからさまに落胆の声を発し少し離れた所でしゃがみ込んでいた。
池島義也
同じクラスの男でみんなより頭一個背が高い、結構目立つ存在の奴だ。
それに比べてオレは、見た目も身長も、勉強だって平均的な生徒だった。
だからいつも行動するグループも違うし、正直話したこともあまりなかったけど…
「あー、くそ!何だよ。明美の奴、バックレたな…」
…
どうやらオレは同じクラスの女子である佐藤明美と間違えられたらしい…