「…というわけで、早くみんなの顔と名前を覚えられるように頑張りたいと思います!じゃあこれからまた直ぐに始業式だから、みんな寒いだろうけど、体育館に行ってください」
とりあえずの挨拶を終え、生徒が体育館に出たことを確認し、灯子も向かおとしたその時だった。
「え…!?ちょっと大丈夫!?」
ふと職員室に通じる廊下を見ると、職員玄関に男子生徒が倒れていた。
起こすと頬に痣がある。
この学校では禁止だが、金髪だった。
体もよく見ると傷だらけだ。
「や…やめろ……!誰も、呼ぶな!」
「ほ、保健室に連れて行かなきゃ!歩ける!?」
灯子は突然、男子生徒に引っ張られ、男子トイレまで連れ込まれた。
「ちょっと!!」
「静かにしろ!!教師同士で女子生徒の盗撮写真見せ合ってる現場見ちまったんだ…!今は始業式が始まったから逃げれたけど、あいつ等また俺を口封じに来る!」
灯子は半分も理解出来なかった。
盗撮写真?
口封じ?
どんな危険な学校だというのか。
そんな噂は微塵も聞いたことが無い学校…なハズ。
そして…
「な、なんでもいいから手、離してよ!」
「ふざけるな!今さらあんたが始業式に出たら俺が倒れてたとこ目撃したのがバレバレだろ!」
「…誰に?そんな最低な教師はウチの学校には居ません!」
言い切ったものの、配属して半日では分かるはずはなかった。
「新任のあんたまで俺のこと信じてくれないのか!?前から盗撮してやがったんだよ!篠家と濱塚って教師だ!!」
確かにそんな名前の教職員は居たかもしれない。
しかし、見る限り不良高校生が喧嘩して帰ってきたような生徒が盗撮写真の見せ合い現場を見た、と言っても灯子も信じられなかった。
「あなた、名前は?」
「高山(タカヤマ)…」
「何年生?」
「二年…良いから始業式終わるまで隠れてろって!あいつ等に見つかったらあんたまで巻き添え食らうから!!」
男子トイレの入り口から、二人は便座のある場所まで移動して、ドアを閉め、鍵をかけた。